「す、彗星が破壊された・・・!」
1994年、木星に彗星が落下しました。
シューメーカー・レヴィ第9彗星という彗星です。
この彗星、木星に突入する前に20個以上の破片になっていました。
この事には、ロッシュ限界と、潮汐力による破壊という現象が関わってていました。
この記事では、その2つの現象を実例といっしょに解説したいと想います。
それでは、
- ロッシュ限界とは
- ロッシュ限界と潮汐力がすごい!木星の例
という順で見ていこうと思います。
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ロッシュ限界とは
ロッシュ限界とは、
大きな星に小さな天体が近づける限界の距離
のことです。
このロッシュ限界よりも内側に入ってしまうと・・・
小さな天体は破壊されてしまうのです。
それは、大きな星の重力が与える、
潮汐力
による破壊です。
ここでいう潮汐力とは、大きな星の重力が小さな天体全体に均等にかからないことで起こります。
ロッシュ限界と潮汐力!月で考える
ロッシュ限界と潮汐力を、月で考えてみます。
月の地球に近い面には、地球からの強い重力がかかります。
逆に、地球から見えない裏面にかかる地球の重力は弱くなるのです。
重力は近くのものに強くかかりますからね。
つまり、地球が月を引っ張る力は、
月の裏側よりもウサギの模様がある表面のほうに
強くかかっているのです。
これは、月の形をいびつにする力がかかっている状態です。
そのため、月は地球の近くに来すぎてしまうと、地球の重力(潮汐力)によって、破壊されてしまうのです。
このように、月が破壊されない限界となる(地球との)距離がロッシュ限界と呼ばれているのです。
ロッシュ限界ギリギリの月
ちなみに、地球のロッシュ限界は約1万9千㎞です。
現在の地球と月との距離は、約38万4千㎞です。
月が破壊されない、余裕の距離ですね。
しかし、月が地球の衛星として誕生した頃はなんと!
月は地球から約2万kmの距離にあったとされています。
その当時、地球の空には巨大な月が浮かんでいました。
月は地球のロッシュ限界ギリギリの距離にいたわけです。
月は地球の力によって、かなり変形していたのではないでしょうか。
そこから月は、地球との距離を徐々に広げていきました。
現在、月は毎年3㎝ずつ地球から離れていっています。
ロッシュ限界と潮汐力がすごい!木星の例
木星の衛星には、木星のロッシュ限界と潮汐力が大きく影響を及ぼしています。
ここで、木星の3つの衛星を見てみましょう。
イオ・エウロパ・ガニメデです。
木星に近い順からイオ・エウロパ・ガニメデと紹介していきます。
イオにはたらく潮汐力
太陽系の中で、もっとも火山活動が活発だと言われる星があります。
木星の衛星の中で3番目に大きい星、イオです。
イオでは沢山の火山が活動していて、その噴煙が300㎞の高さまで到達することも。
このイオの火山活動は、木星の潮汐力と、外側を回る衛星のエウロパ、ガニメデからの潮汐力によるものです。
※エウロパは木星の衛星で4番目、ガニメデは木星の衛星で1番目に大きい衛星です。
イオは、木星と外側の衛星とから強烈に引っ張られ、変形を繰り返しているのです。
周りの星にゴムボールのように押しつぶされ、引っ張られ・・・。
その変形する大きさは最大で100m。
そのため、イオの内部には膨大な熱が発生するのです。
エウロパにも潮汐力が
潮汐力による熱エネルギーは、イオを引っ張っているエウロパにも発生しています。
やはり、木星やイオ、ガニメデの重力による潮汐力が発生しているのです。
エウロパも伸びたり縮んだりしていて、地下深くでは火山活動が起こっているのです。
エウロパの表面は、厚さ数十㎞の氷で覆われています。
さらに、その下には深さ100㎞ほどの海があるとされています。
その海の下に火山があり、海を温め、
「もしかしたら生物がいるの!?」
と期待させてくれる星になっています。
ガニメデとロッシュ限界
最後に、木星の衛星として一番大きなガニメデです。
ガニメデは、水星よりも大きい星なんですよ。
このガニメデの表面には、木星のロッシュ限界に入り込み、破壊された天体の痕跡が残っています。
木星の潮汐力によって破壊されたと考えられている天体。
そのストーリーを見てみましょう。
- 小さな天体が木星の重力に引き寄せられる
小さい惑星か、彗星と思われます。 - 小さな天体が木星のロッシュ限界の内側に入ってしまう
- 小さな天体が破壊される
木星の潮汐力によって小さな天体が伸縮され、ついにはコナゴナに破壊。 - コナゴナになった天体がガニメデに隕石となって衝突
という感じです。
この衝突は、エンキ・カテーナと呼ばれるクレーターとして、ガニメデの北部に乗っています。
エンキ・カテーナは迫力満点です。
直径10㎞のクレーターが13個程度、一直線上に並んでいるのです。
その長さは160㎞にも及ぶんですよ。